11月 13

出産〜感想&感動編〜

ひとりごと 2008年11月13日 8:38 PM 出産〜感想&感動編〜 はコメントを受け付けていません

ついに生まれてくれました。
2008年11月12日 16:07 3190gで男の子でした。
母子ともに健康です。

4人姉妹の末っ子の妻子は、自分もお姉さんたちと同様、予定日より少し前に生むと思っていました。僕もそうだったけれど。ところが前駆陣痛だけが長く、なかなか生まれてくれませんでした。

結局予定日を1週間遅れて、しかも分娩室に入ってから28時間ぐらいかかりました。
ずっと立ち会った訳ではなく、しんどくてちょっと外に出させてもらったりしていたけれど、最後の最後、まさにあともう5回ぐらいいきんだら生まれる、ってタイミングで助産師さんが仮眠中の僕を呼びに来てくれました。僕は妻子の背中側に回り、人間分娩台となり、妻は僕の両手をバー代わりに全力で握りしめて、とうとう彼は生まれたのでした。



それにしても、予定日を超えたあたりで僕はかなりあせっていました。

もちろんこのご時世、よっぽどのことがなければ、とにかく生まれては来ると思うけれど、帝王切開なり、促進剤なり、それなりにリスクはあると思うし、かといって自然分娩にものすごいこだわりがある訳でもないので早くなんらか医療行為に踏み切ってくれた方が妻も僕も楽かも…と思っていたのです。いや正直に言うと、初産から帝王切開だと次以降も帝王切開の可能性が高いということを知ってからは、できるだけ自然に生んでほしかった。彼女自身は自分が帝王切開で生まれてるので抵抗はさほどなさそうだったけれど。

さらに、予定日の週、僕は立ち会い出産のために平日を全部休んでしまい、そこまでしたのに結局生まれずに出社するのが気まずかったりして。

今思えば、生まれ方がどうだろうが、会社を何日休もうが、そんなのどうでもよいこと。ちゃんと生まれてきてくれたこと、そこに立ち会うことが出来たことに勝る喜びはなかった。今思えば、である。今になって冷静に考えられるけど、かなり動揺していたな。

最終的に僕ら夫婦が何を優先するのかを話し合っていないまま、本陣痛に入ってしまい、彼女も冷静でない状況で彼女の意思を尊重するのが正しいのかどうか、など、めちゃめちゃ混乱していた。産院にどうしますか?ともし聞かれたらホントどうしよう、と思っていた。

結果的には相当苦労したが自然分娩を全うしてくれて助かった…。
結局骨盤や産道が狭かったかららしい。

それにしても驚いたのは、妻子から顔だけ出した状態で、子どもが産声を上げ出したこと!つるんと全身が出て、羊水なりを吸引して、ようやく泣くのかとばかり思っていたので。

生まれた瞬間は、涙がこぼれました。その涙は、新しい命が生まれたこと<妻子が本当に健気に頑張ってくれたこと、でした。号泣にはいたらなかった。なぜなら子どもについては、健康なのか、なにか異常はないか、ということの心配が9割ぐらい先に立っていたから。子どもに生まれながらの一切の不幸が訪れてほしくない。なにかあったらどうしよう。怖い!というのが気持ちのほとんどを占めていました。

こんな気持ちって、はっきり言って最低だと思う。障害を持って生まれて来た子どもやその親御さんに対して。でも、それが本当に本当の正直な気持ち。記録として、残しておく。しかし、今は障害や先天的な病気を持って生まれてきた子どもの親御さんのショックや、その子どもに対する愛情のほんの一端を知ることが出来た気がする。そういうのもおこがましいとは思うけれど。

もっとさらけだしてしまえば、異常が起きてほしくない、というのは子どもが可哀想だからよりも、僕自身や妻の人生が不幸になる方を恐れていた。最低だ。でも、それも正直な気持ち。

生まれてきた子どもは、予定日より1週間遅れて生まれてきたせいか、めちゃめちゃしっかりした顔。もっともっと真っ赤でしわくちゃのお猿さん、かと思ったが、完全に「人」って感じでした。それも意外だったな。

妻と子どもは生まれてすぐ母親の胸に抱かせる、いわゆるカンガルーケアをした訳だけれど、本当に美しい、神々しい風景でした。そしてこの母親と、生まれてきた男の子の間には、僕には決して立ち入ることの出来ない絆があるのを感じました。特に妻の顔。菩薩そのものでした。

そんなこんなで、ず〜っと何か問題はないだろうか、という不安感を根底に抱えつつ、へその緒を切ったり、初めて抱っこしたりしたけれど、これが自分の子どもなのだ!って実感は全然分からず(笑)。ただそこに、おお!かわいい「小さな人間」がいる!って感じ。一瞥して自分と顔が似てる!とかそういうのが分かれば別だったかもしれないけど。とにかく子どもについては変に冷静でした。

産院は生まれたその日から母子同室させる主義で、その日の夜から早くも親子3人川の字になって寝た。23時頃泣き出したので、起き上がることも出来ないほど消耗した妻に代わって抱っこしてあやしながら廊下を歩いていたら助産師さんが可哀想に思ったのか、育児室に連れてってくれた。おかげで朝の6時ぐらいに部屋に連れ戻してくれるまでは寝れた。

しかし、その時間からはとにかくよく泣くため、僕があやし係。指を上手にチュッチュッとすうのでおっぱいが欲しいのだろうと思った。突然ギャン泣きするので、おむつを確かめたらまっくろな胎便をしてる。おむつじゃないか?と思って、それが当たっていたのでうれしかった。助産師さんに習った通り、おむつを替える。妻よりも僕が先におむつを替えた!この胎便というのが全く臭くなく、それどころか大変不思議なことに濃厚なメイプルシロップのいい香りがする。おむつを替えるとご機嫌な感じになってくれる。この辺りでやっと緊張がほどけてきたのか、愛情が猛烈に湧いてくる。自分でも女性的な部分がある人間だと思うが、ホント母性みたいなものが刺激される感じ。本気でおっぱい吸わせたかったわ、パイ毛だらけの!

いよいよお別れの時間。大阪に戻る。

驚いたのは新千歳に向かう車中。

朝の眩しい光に照らされた北海道の自然を見ながら、ヨーヨー・マの「プレイズ・モリコーネ」を聴いていたら、突然涙がこぼれてしまって止まらなかった。嗚咽も漏らさず、ただぽろぽろとこぼれた。

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あれが妻も、誰も知らない、本当の僕の心からの涙だった。

亡くなった父のこと、母や兄のこと、妻に対する感謝の気持ちと愛情、やっと終わった安堵、これからやってくるだろう幸せな日々、自分が生まれてきたことや生きていることの素晴らしさ…。

あの景色を忘れることはないだろうな。
ますます北海道は僕にとってかけがえのない土地になった。

経験者に聴けば、これからが本当に大変なんだよ、と皆が言う。本当にその通りなんだろう。
でも、きっと頑張れる。
子どもが僕と妻を成長させてくれるだろう。

僕らを選んで生まれてきてくれたことに感謝して。

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